遺品整理の事例① ~残された写真~
こんにちは、ねこのてです。
今月も弊社代表、宮脇によるねこのて通信をお届けいたします。
弟さんに渡った1枚の⽩⿊写真
遺品整理では、たくさんの家族の物語が垣間⾒えます。
今回は「写真」をテーマに、実際にあった出来事をお伝えしていきます。
2⽉のある⽇、90代⼥性のアパートに遺品整理に⼊らせていただきました。
⼀⼈暮らしをしておられ、お正⽉明けに体調を崩して⼊院。そのままあっけなく他界されたと聞きました。
80代の弟さん⽴ち合いのもと、2DKのお部屋に入ると、ご主⼈の写真が飾られた仏壇と、おせち料理がそなえられているのが⽬に⾶び込んできました。
⼥性が仏壇に向かって「お⽗さん、今年もお正⽉が来たよ」と⼿を合わせている様⼦が⽬に浮かびました。
お部屋は整理整頓され、丁寧な⽣活ぶりがうかがえました。⼆⼈がけのテーブル、たんす、こたつ、⼩さな仏壇、そして⾷器棚。
その引き出しから、弟さんへの⼿紙が出てきました。
弟さんに渡すと、隣の部屋に⾏き、静かに読み始められました。すると突然、弟さんが⼤号泣する声が聞こえてきたのです。
⼿紙には、やんちゃをしていた弟さんを気にかけていたこと、⾃分がいなくなったあとのことはよろしく、と書かれていたようです。それを⾒て、感極まられたのでしょう。
お姉さんが残したものの中には、1枚の⽩⿊写真がありました。そこに写っていたのは、若かりし頃の弟さんご本⼈。
お姉さんは⼤切に保管されていたのです。
「わしゃ、こんなん持っとらん」。
弟さんはそう⾔いながら、⽩⿊写真を遺品として持ち帰られました。
お姉さんの弟さんへの愛が、⽩⿊写真に込められている。そう感じました。
壊れかけの家から出てきた嫁⼊り写真
次にご紹介するのは、三⼈兄弟のお⽗様が亡くなり、そのご実家に遺品整理に⼊らせていただいた事例です。
そのお家は、いわゆるゴミ屋敷でした。半分床が抜け、とても⼈が住める状態ではありませんでした。ところが、30代の弟さんだけが住み続けていたのです。
お兄さんたちの勧めで、弟さんも家から出ることに。そのため、遺品整理というより、お家全体の⽚付けをすることになったのですが、とにかく物が膨⼤。
特に⼤量だったのが、亡くなられたお⺟様が作っていた酢漬けです。
ご家族の健康を思って作られたのでしょうが、30年分くらいの量がありました。処分するだけで3⽇かかったほどです。
ご実家の物は、ほとんど廃棄処分するしかありませんでしたが、仏壇からは⼤切なものが出てきました。それは、お⺟様の嫁⼊り写真。
古い写真でしたが、初々しい嫁⼊り⽀度の姿が写し出されていました。
ご兄弟は、壊れかけの家から物がどんどん出されていくのを、感慨深そうに⾒ておられました。
「ちょっと写真とっていいですか?」と私に声をかけながら、様⼦を撮影されていました。
きっと、思い出に区切りをつけていらっしゃったのだと思います。
⾃分たちが⽣まれ育った家、そして⾃分たちを⽣かしてくれた物の数々。それを⽬にしながら、⼼の整理をしていらっしゃったのではないでしょうか。
遺品整理が終わったあと、そのお家は解体、売却されました。
ご実家はなくなりましたが、お⺟様の嫁⼊り写真を含め、遺品として残されたものは、ご兄弟の⼤切な思い出として残り続けるのだと思います。
(続く)
毎月第一月曜日にねこのて通信を配信していきます。