遺品整理の事例2 ~絆のカタチ ~
こんにちは、ねこのてです。
今月も代表宮脇によるねこのて通信をお届けします。
小さな巾着袋に入っていたもの
60代のお母様を亡くされた娘さんから、「住んでいた家を処分したいから、遺品整理をお願いしたい」と連絡がありました。
私は生前、このお母様とお会いしたことがあります。
というのも、ご主人と離婚されるとき、引っ越しのお手伝いをしたことがあるからです。
お母様のお部屋に入ると、トルソーや糸巻き車など、一般家庭では見られない調度品がたくさん置いてありました。
私は娘さんに、「これ、残されますか?」と一つひとつ聞いていきました。ところが、すべて「いりません」とおっしゃるのです。
どうやら、お母様のことをよく思っていなかったようです。
私はふと、お母様の鏡台の引き出しに巾着袋が入っているのを見つけました。
中を見ると、ベビーシューズ、よだれかけ、ベビーマグなどが入れられていました。
娘さんが小さい頃に使っていた品だと、すぐに分かりました。
娘さんに巾着袋をお見せし、「どうしましょうか」と聞きました。
しかし娘さんは「いらないです!」と突っぱねられました。
私は困りました。私も一人の母親です。
巾着袋を残したお母様の気持ちが分かるのです。
仕方なく、事務所に持ち帰りました。
後日、その娘さんから、「あの巾着袋はどこから出てきたんですか?」と改めて聞かれました。
私は、鏡台の下の引き出しから出てきたこと、鏡台には女性の大切なものがしまわれていることが多いことを伝えました。
すると娘さんが、こんな話をしてくれたのです。
「正直、勝手な母やと思っていました。でも、巾着袋の中味を見て、母が私を愛してくれていたのは伝わりました。母の生き方を尊敬することはできないけど、でも理解はできます」
結局、娘さんは巾着袋を受け取りません でした。
でもきっと、それが娘さんなりの お別れであり、お母様との絆の結び方なのだと思いました。
手紙の束に込められた思い
残された手紙から垣間見える絆もあります。
ある旧家に遺品整理として入らせていただいたときのこと。
60代の男性が一人で住んでおられましたが、亡くなってしまい、住まい手が誰もいなくなったため、不動産会社が遺品整理を依頼してこられました。
古くから続く軍人さんの家柄だったようで、1階からは勲章やサーベルのレプリカが出てきました。
亡くなった男性が暮らしていたのは2階のお部屋。
そこには大量の絵があり、絵を描くのが趣味だったことがうかがえました。
遺品整理をしていると、四角い缶が出てきました。
中に貴重なものが入っていないか確認するため開けてみたところ、男性の生みの母からの手紙が束で出てきたのです。
男性は養子に入られた方だったのです。
手紙を見て、私は切なくなりました。
「お乳を飲んでいる顔を思い出しては泣いています」 「がっこうに、げんきにかよっていますか?」
文面からは、わが子を思う母の気持ちが痛いほど伝わってきました。
こうした遺品を目にすると、つくづく、家族の絆のカタチはさまざまだと思います。
ただ一つだけ言えるのは、最後の最後に家族を幸せにする遺品は、家族に対する「思い」だと。
どんな高価な遺品よりも価値のある、かけがえのない遺品だと思います。(続く)
毎月第一月曜日にねこのて通信をお届けします。